循環器系学会からの被災地の皆様への注意とお知らせ
平成28年4月17日
平成28年4月14日からの平成28年熊本地震およびそれに引き続く九州地域の地震に被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
私たち循環器系学会は、循環器・血管疾患の予防・治療に関わっている学会で、静脈血栓症・肺塞栓症の予防・治療に深く関わっております。今回のような大震災にあたっては、多数の方が避難所で生活するかあるいは車中泊を余儀なくされていると思います。このような環境の中では皆様もご存じのエコノミークラス症候群(静脈血栓症特に肺血栓塞栓症)の危険性が高まってしまう状況にあります。今回の震災では、大きな余震が多発しているため、自家用車の中に避難して寝泊まりされておられる方も少なくないかと思います。このような車中泊の被災者は、同様に余震が頻発した中越大地震でも数多くおられ、高率に静脈血栓症・肺塞栓症を引き起こし、地震の難をのがれた被災者の命を奪う原因となりました。
循環器疾患を扱う当学会としては、何とかこの疾患による予防できる死亡を減らしたいと考えます。 現在まで学会としては静脈血栓症・肺血栓塞栓症の予防の重要性を、学会活動を通して啓蒙してきました。静脈血栓症は、足を動かさないこと、脱水、足の怪我などで起こる危険性が高くなります。
静脈血栓症・肺塞栓症を予防するために最も重要なことは積極的な運動(歩行)ですが、避難しておられる状況では難しいことも確かです。止むを得ず車中泊をされる場合や避難所の中で運動などがままならない場合には、弾性ストッキングを適切な指導の下、使用することで静脈血栓症・肺塞栓症の予防効果は高まることが知られています。このような観点から、避難されている方にはエコノミークラス症候群の予防への関心を深めていただきたく、長時間自動車のシートに座った姿勢で眠らない、時々足首の運動を行う、ふくらはぎのマッサージを行う、十分な水分を補給する、可能であれば避難所で簡易ベッドを使用するなどの点に注意して予防に努めていただきたいと思います。弾性ストッキングは、現在メーカーに援助をお願いし、被災地に届くように手配しております。弾性ストッキングの着用、その適応、はき方、脱ぎ方、問題相談については、九州各県で弾性ストッキング・コンダクターが養成され、主として病院勤務しております。従って、問題があればご遠慮なくその方々からの助言を得るようお願いします。弾性ストッキング・コンダクター養成委員会でも、弾性ストッキングに関するメールでのご相談を受け付けます(stocking@minamikyousai.jp)。
日本循環器学会
日本静脈学会
日本心臓血管外科学会
日本血管外科学会
日本脈管学会
日本胸部外科学会
肺塞栓症研究会