日本血管外科学会理事長就任にあたって
この度、2022年5月の総会にて当学会の理事長を拝命いたしました。中島伸之先生、安田慶秀先生、重松宏先生、宮田哲郎先生、そして、古森公浩先生に次いで6代目となります。
私は2013年から当学会の理事として、データベース管理運営委員長、モデル研究委員長、破裂AAA委員長、国際委員長、将来構想委員長などを務めさせていただき、また、Distal bypass workshopの立ち上げ、ガイドライン事業などに参画させて頂き、まさにこの学会に育てて頂きました。これらの経験を生かし、これから2年間、全力で理事長の職責を果たしてゆく覚悟でございます。
日本血管外科学会は、「血管外科領域における安全で良質な医療の提供を通じて人々の健康と福利の増進を目指す」という本学会の理念に基づき、歴代理事長により、血管外科における治療や研究の進歩発展につとめてまいりました。その中で、近年、特に、①データベース事業、②ワークショップ事業、③国際化の3本柱に注力がなされ、血管外科治療実態の発信やデータベースに基づいた研究活動が行われ、その成果の発信と会員への還元がなされ、また、3大ワークショップを展開して、血管治療技術の伝承、良質な治療の普及がはかられ、さらに、国際学会への発表が奨励され、日本の血管外科の世界への発信も行われてまいりました。上記の3本柱は国際的にも認知されるようになっております。また、国内では、日本心臓血管外科学会や日本胸部外科学会と並んで3大循環器系外科学会のひとつとして、循環器系の外科治療の発展は勿論、専門医育成、学生リクルートにも尽力してまいりました。
この間、我が国では高齢化が進み、生活習慣病の蔓延も長期化してきたことで、ますます血管病は増え続けるとともに治療法も多様化しており、そうした社会的ニーズに応えるためにはまだまだ血管外科医が少ないことが浮き彫りになってきています。さらに、次々と新規治療技術が進歩しており、医療者側だけでなく治療を受ける患者側へも治療適応や治療方法についての正しい知識の周知が学会の重要な使命になると考えられます。一般社会において、血管の病気についての認知度は、まだまだ低いままであり、また、「血管外科」が何をしているところなのかも知られていないのかもしれません。
そういった現状を踏まえますと、第6代理事長としての使命は、従来の重要な柱に加えまして、① 血管外科を志す若手会員を増やし、若手が活躍できる場をより多く提供すること、②血管疾患の市民啓発とともに、血管外科の役割を社会に発信することではないかと考えております。加えて、直面している働き方改革や循環器病対策基本法下の改革においては、地域実状に応じた血管病治療体制整備や多職種連携という意味において地方会の役割に注目し、地方会の活性化も重要課題であると考えております。
会員の皆様にとって、魅力ある活躍の場としての学会であるとともに、学会活動を通じて会員の皆様や患者さん、一般市民に貢献してゆけるよう尽力してまいりますので、皆様の温かいご理解とご指導、ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。