リンパ浮腫とは、「リンパを輸送するシステムのトラブルにより、リンパをうまく血液中に戻すことができず、細胞と細胞の間にリンパがたまってしまった状態」をいいます。
リンパ浮腫は、他に原因がみあたらない原発性のものと、ケガや、ガンの手術など他の原因によって引き起こされた続発性のものに分けられます。
リンパ浮腫では、腕や足に腫れやむくみ(浮腫)があらわれます。
はじめに超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査などの画像検査によって他の類似の病気ではないことを確認します。その上で、リンパ輸送システムのトラブルが、リンパシンチグラフィー、ICG蛍光リンパ管造影、リンパ管造影などの検査で認められた場合にリンパ浮腫と診断されるのです。リンパ浮腫の大部分を占める続発性リンパ浮腫の場合には、ガンを含めその原因疾患がみつけだされます。国際リンパ学会では、リンパ浮腫の病期を、まだむくみ(浮腫)があらわれていない「0期」から、腕や足を上げることでむくみ(浮腫)が消える段階である「Ⅰ期」、腕や足を上げてもむくみ(浮腫)が軽くならない「Ⅱ期」、そして皮膚に変化(線維性硬化を伴う)があらわれた「Ⅲ期」に分類しています。
リンパ浮腫の治療は、保存的治療と外科的治療に大別されます。主には保存的治療が行われ、保存的治療としては、スキンケア、手を使ったリンパドレナージ(排出)、弾力のある着衣や包帯による圧迫療法、圧迫を加えながらの運動などを組み合わせた治療(複合的理学療法)の効果が報告されています。残念ながら手を使ったリンパドレナージには今のところ保険がきかず、実施できる医療機関が限られています。薬物療法については、現時点では推奨されていません。外科的治療として、リンパ管微小静脈吻合が行われていますが、高い技術が求められるため限られた医療機関でのみ行われており、この手術に適した患者さんや長期的な効果の評価にはまだ時間がかかるものと思われます。
リンパ浮腫の合併症としては、病期が進行した場合の皮膚病変や蜂窩織炎、悪性疾患などが挙げられます。先ほどご紹介した病期分類の「Ⅲ期」に入り、硬化性の皮膚の変化が認められる場合にも複合的理学療法を続けることによって軽快が期待できます。また、細胞の間にたまったリンパは、感染症の温床となります。万一、蜂窩織炎と呼ばれる感染症が発症した場合、敗血症に移行する危険性があります。
その上、蜂窩織炎はリンパ輸送システムの機能をさらに低下させてしまうためその予防が重要となります。蜂窩織炎を予防するため、複合的理学療法を中心とした保存的治療によって腕や足をよい状態に保つことが望まれます。蜂窩織炎が発症してしまった場合には、急激に重症化することもあり、抗生剤による治療が行われます。リンパ浮腫を長期間にわたって治療をせず放置した場合、患部にカポジ肉腫やリンパ管肉腫などの悪性疾患が発生することも報告されています。
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