腹部大動脈瘤って?

腹部大動脈瘤とは

 大動脈瘤とは、大動脈が正常の太さの1.5倍以上に瘤(コブ)状に膨らんだもので、腹部大動脈の場合には正常な太さが約2cmであるため3cm以上に膨らんだ場合に「腹部大動脈瘤」ということになります。

 その原因の90%以上は動脈硬化であり、その他に感染症(梅毒、サルモネラ菌など)、炎症を引き起こす病気(高安動脈炎、ベーチェット病など)、ケガ、先天性(生まれつき)の病気(マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など)などが原因として知られています。

 50~70歳が発生のピークで、平均年齢は65歳前後であり、男女比は6~8:1程度と圧倒的に男性に多いとされています。

症状

典型的な腹部大動脈瘤のCT写真

典型的な腹部大動脈瘤のCT写真

部の拍動性の腫れとして瘤を手で触れることもありますが、症状がないことが多く、検査で偶然発見されることも少なくありません。瘤が大きくなって周りの臓器を圧迫するようになると、腰痛や腹痛、圧迫感などの症状があらわれてきます。瘤が破裂してしまった場合、痛みや出血性のショックが引き起こされ、高い確率で生命が奪われてしまいます。そのため、瘤が破裂する前に外科的な治療を行う必要があるのです。

診断

音波(エコー)検査は、簡単で痛みもなく、最初の検査として有用です。超音波検査で腹部大動脈瘤が確認された場合、手術の方針を決めるために、CT検査を実施して動脈瘤の大きさ、拡大範囲や形状、そして動脈壁の性状および破裂の有無などについての正確な情報を得ることができます

治療

裂した動脈瘤は、手術以外に命を救う方法がないため、既に症状があらわれている場合には緊急手術を行うことになります。症状のない場合でも、瘤が大きいほど破裂しやすいため、45~50mm以上の場合には手術が行われることが多くなっています。その他にも、半年で5mm以上大きくなった場合、形が一部分とび出している(嚢状)ような場合には破裂しやすいとされており、手術が適用されます。これには該当しない小さな動脈瘤については、血圧を下げる降圧療法を行い、定期的なCT検査で経過をみていきます。

手術

が破裂する前に手術を行った場合の早期死亡率は1.4~5.1%と比較的良好ですが、破裂してしまった場合の成績はよくないため、破裂する前に診断し、治療を行うことが重要です。

人工血管置換術
腹部大動脈瘤の外科治療の基本は、人工血管置換術です。お腹の真ん中を切開する腹部正中切開による開腹到達法と、お腹の真ん中より少し外側を切開する腹膜外到達法があります。いずれも血液をサラサラにするヘパリンという薬を投与し、血管の瘤のある部分の前後を一旦遮断しておいて直管型あるいは分岐型人工血管に置き換えます。-ステントグラフト内挿術(詳細はステントグラフト治療の項参照)切開した鼡径(そけい)部から血管に細い管(カテーテル)を挿入し、ステントグラフトと呼ばれるバネ状の金属を取りつけた人工血管を挿入する手術方法です。血管内に圧着固定することで瘤を血流から遮断することができます。日本でも2006年7月に最初のステントグラフトが厚生労働省の認可を得て実際に患者さんに使用されており、現在急速に普及しています。手術による侵襲の程度が小さく、一定の形の瘤であればハイリスクな方にもメリットも大きく有用なのですが、エンドリークと呼ばれる動脈瘤内への血液の漏れや、ステントグラフトの位置移動・屈曲・破損、遠隔期の瘤拡大・破裂など、今後改善すべき点も指摘されています。
腹部大動脈瘤の手術(人工血管置換術)
腹部大動脈瘤の手術(人工血管置換術)

研究

腹部大動脈瘤の研究

腹部大動脈瘤の研究

このページは健康に関する一般的な情報の提供を目的としています。疾病の治療については必ず医師の診断を受けて、その指示に従ってください。