手足の静脈には、逆流防止のための弁がついており、血液が心臓に戻りやすくなっています。この弁の働きが悪くなって逆流が引き起こされたり、太い静脈が詰まった場合、静脈圧が高くなります。このような理由で、皮膚に近い部分の静脈が太く長く膨らんでくるのが静脈瘤であり、そのほとんどは足(下肢)に生じます。
明らかな原因が不明のものと、最近注目を浴びている深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の後遺症として起こるものがあります。日本人では40%以上の頻度でみられるとされ、日常、最もよくみられる病気のひとつです。
特に高齢の方、女性に多くみられ、リスク因子として家族での発症や立ち仕事の関与などが知られています。
軽度のものでは、重苦しい感じ、だるさ、痛み、むくみなどの症状があらわれます。美容上の観点から気にされる方もいらっしゃいます。さらに症状が強くなると、皮膚に変化が生じ、色素沈着(皮膚の色が黒っぽくなる)、皮膚硬結(皮膚が硬くなる)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、皮膚潰瘍(皮膚が崩れえぐれたようになる)まで多くの症状があり、放置すると少しずつ悪化していきます。
足の観察を行った後、血流の音を検出するドプラ聴診器を使って血流の異常についてチェックします。詳しくは、超音波(エコー)検査で静脈の異常を確認したり、脈波検査で下肢の静脈の働きを測定します。重症の場合、造影剤を用いた静脈造影や、CT検査、MRI検査などの画像検査が必要となることもあります。
基本的な治療として、長時間の立ち仕事や座位を避ける、足を上げて休憩する、マッサージを行うなど日常生活の改善や、弾性ストッキング着用による圧迫療法があります。弾性ストッキングについては、使用法や注意点を分かりやすく説明してくれる専門のスタッフ(弾性ストッキングコンダクター)がいる病院もあります。
硬化療法は、刺激性の薬剤を静脈瘤内に注入し、静脈を閉塞させる(ふさぐ)方法です。主に細い静脈瘤に対して実施され、外来で行うことができます。血液の逆流が強い場合は、一般的に手術が実施されます。手術法として、逆流が起こっている静脈を抜去するストリッピング術、静脈を縛ってしまう高位結紮術があります。2011年には、レーザー焼灼術が保険適用となり、日本でも盛んに行われるようになっています。
下肢静脈瘤は良性の病気です。肺塞栓症(血の塊が肺の血管に詰まる)が引き起こされたり、重篤な状態となることはかなり稀といえます。
ここでご紹介した治療法には、それぞれに利点があり、また適した患者さんが異なります。治療法の選択にあたっては、患者さんの症状や状態、さらには活動度やご本人の希望も考慮に入れて決定しますが、組み合わせて行うこともあります。
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