会長挨拶
第39回日本血管外科学会総会開催にあたって
医療の歴史をその黎明期である中世から今日までたどると,その進歩は科学技術の発達と連動しています.最近の血管外科領域における歴史的進化は,まさにテクノロジーの進歩によるものであり,そして,我々はいま変革期の最中にいるといえます.このような時期に,第39 回日本血管外科学会総会を当地沖縄で開催させていただきますことは,私ども教室にとりまして大変光栄であり,これまでにご指導とご鞭撻を賜りました先輩諸兄・会員の皆様方に心から厚く感謝申し上げます.
今回の学術総会では,日常臨床診療を重視すべくそのテーマを“Experience-based Evidence(その一つの症例から)”といたしました.外科治療の性格上,統計ではなく一つ一つの症例を積み上げてこそ,いわゆる“Evidence”に近づけるとの思いから,テーマとして掲げました.応募演題数は880 余題を数え,ここに深く感謝申し上げます.応募演題の採否は,プログラム委員の先生方の審査結果を基に,最終的には会長の判断で決定いたしましたが,それぞれの応募演題が血管外科における重要な問題を指摘しており,許す限り多くの演題を採用させていただきました.そのためやや忙しい学会となるかもしれませんが,御了承いただきたいと思います.総会の内容としては,初日に本県出身で3 人のトッププロゴルファーを育て上げた宮里優氏に,その経験をふまえた内容の特別講演をお願いいたしました.学術講演としては,6 つの招請講演,4 つの教育講演に加えてシンポジウム5 題,ビデオシンポジウム6 題,パネルディスカッション6題,要望演題13 題,一般演題(口演,ポスター)を用意しております.教育講演では,清原教授にあの久山町研究について講演していただき,臨床研究の神髄を感じていただければと思います.また,いまだ解決しない術後対麻痺に関しては,垣花学,垣花脩の両先生にそれぞれ臨床的,細胞移植治療を含めた基礎的研究の講演をお願いしております.外国からは,若手で活躍中の外科医を中心に9 名招待しました.Michael Jacobs(Netherlands), Anthony L. Estrera(USA), William Jordan(USA), Manish Mehta(USA), John W.Fehrenbache(r USA),Matthias Thielman(n Germany),Eric L.G. Verhoeve(n Germany),De Paulis R(Italy),Tae-Won Kwon(Korea)の各先生には招請講演,国際シンポジウム,セミナーでの講演をお願いしております.各国の血管外科の現況,特にEndovascular Surgery について言及していただく予定であり,諸外国の状況が認識できるものと考えております.また,Matthias Thielmann 先生には,今後Endovascular 治療領域の一つになるTAV(I Transcatheter aortic valve implantation)について講演していただく予定としております.より多くの血管外科関係者にご参集いただき,活発なディスカッションが行われて,参加者皆さんにとりまして実りある学術集会となることを期待しております.
今総会の開催時期の4 月は旧暦3 月にあたり,この時季を沖縄の言葉で「うりずん」といいます.ちょうど,大地が潤って稲の植付けに適した時期をさし,春が終わり夏の到来を知らせる言葉です.一足早い夏を多くの参加者が楽しめることを期待いたします.沖縄は亜熱帯の美しい自然や,その独自の歴史と文化に基づく多くの遺産があります.また,一方では,現在にまで続く沖縄の現実もあります.学術総会の合間にでも,是非機会をつくってそれらを巡っていただけると大慶至極に存じます.