症例 日血外会誌 9:51-55,2000 

解離性大動脈瘤に対するステントグラフト留置術
-ステント末梢側ULPの発生-

鈴木 伸一,近藤 治郎,井元 清隆,戸部 道雄,岩井 芳弘,高梨 吉則
横浜市立大学医学部第1外科

要  旨:症例は57歳,男性.1996年12月急性大動脈解離(Stanford type B)の診断で緊急入院し,降圧保存療法を受けた.2年後に胸部下行大動脈瘤が4.8cmに拡大し,左鎖骨下動脈末梢2.7cmの胸部下行大動脈に存在するentry閉鎖目的でステントグラフト留置術を施行した.Gianturco Zステント(外径40mm,3連)とwoven polyester graft (径37.5mm)で作製したステントグラフトでentry閉鎖に成功し,偽腔は血栓化した.しかし術後8ヵ月の胸部CT検査で,ステントグラフト留置部末梢に新たにulcer like projection(以下ULP)の発生を認めた.このULPに対してステントグラフト追加留置術を施行し,血流遮断に成功した.現在使用しているステントグラフトは構造上柔軟性に乏しく,大動脈弯曲に対する適合性に問題がある.ステントグラフト末梢が大動脈内膜壁を損傷しULPを発生したと考えた.より柔軟性の高いステントグラフトの開発が必要である.

索引用語:解離性大動脈瘤,ステントグラフト留置術,ステント末梢側ULP,追加ステント

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